後継者に必要な能力
経営者の役割で最も重要なものは、事業計画を策定し、計画達成を実現することです。
後継者がその役割を果たせるようになれば、経営者として一人前と認められます。それでは、そのために必要な能力は何でしょうか。
下記は、後継者にとって最低限必要なものです。
【事業計画を策定するために必要な能力】
- 経営理念の理解
- 会社の実態把握力
- 事業のリスクマネジメント
【計画を遂行するために必要な能力】
- 決断力
- リーダーシップ
- 営業力
- 社外からの信頼
■経営理念の理解
経営理念とは、会社経営の根幹をなすものです。
2代目以降の経営者は、自社の歴史を知り、先代から伝えられた経営理念を心に刻むことで、様々な局面に遭遇しても、軸足がブレることなく経営をすることができます。
■会社の実態把握力
<自社事業の技術や経営ノウハウの熟知>
例えば、製造業であれば、自社の技術面の価値、卸売業であれば、流通のノウハウを理解することなど、自社の強みと弱みを知ることが、事業計画策定の第一歩です。
<財務内容の理解>
財務分析を行って、自社の収益構造や、経営指標(収益性・成長性・安全性)、キャッシュフローや借入の返済状況を理解しておかなければ、新規の設備投資、業況が悪化した場合の資金調達方法などが判断できず、会社の実態を反映した事業計画の策定はできません。
■事業のリスクマネジメント
事業には常にリスクが存在します。特に新規に投資をする際には、大きなリスクが伴います。
利益をあげること、目標を達成することは重要ですが、攻めの経営だけが正しいのではないことを理解する必要があり、目標の策定後に、景況が悪化した際には、当初の計画を下方修正するなどの判断が必要です。
例えば、現在、コロナウイルスの被害がある中で、攻めの経営が正しいかどうか?を検討することは、重要なリスクマネジメントと言えます。
■決断力
目標と実態の差異を正しく認識して、軌道修正や撤退など、状況の変化に応じて、適切かつ迅速な決断を下すことが必要です。
例えば、一度策定した目標を下方修正することは、勇気がいることですが、無理な目標を従業員に強いた結果、コンプライアンスに反するビジネスが行われた会社も実際にありました。
経営についての決断は、経営者にしかできないものですから、この能力を磨くことはとても重要です。
■リーダーシップ
目標の達成に向け、従業員からの信頼を得ることが重要です。
信頼を得るためには、社員に目標や実行計画、達成する目的を正しく理解させ、目標達成の動機付けをすること、そして、貢献した人を正しく評価することが必要です。
従業員は信頼しているリーダーのためなら、より一層の力を発揮するものです。
■社外からの信頼
大口取引先から信頼を得ることは、業績の維持には必要なことです。中小企業は社長の顔でつながっている取引も多いので、後継者は先代に代わって、早く取引先の信頼を得ることに力を入れる必要があります。
また、資金調達の点で銀行から信頼を得ておくことは重要で、信頼を得ていれば、新規設備投資や、経営環境の悪化でも資金調達ができる可能性が高くなります。
現在のコロナウイルスの被害が拡大する状況で、安定資金の調達ができるかどうかは、日頃の信頼関係も大きく影響するものです。
■営業力
既存のお取引先の維持や新規開拓は、営業部門が担っていることが通常ですが、時には会社の顔である社長自らがトップセールスマンとして、対外折衝することは必要です。
そのための交渉力を身に付けておかなければなりません。
必要な能力を習得する方法
後継者が経営者に必要な能力を身に付ける方法は、その内容により社内・社外に分かれます。
会社の経営理念や自社事業の技術、ノウハウの理解は社内でしか習得できませんが、自社の収益構造や経営指標を理解するための分析手法は、社外の中小企業団体、金融機関などが行っている後継者塾やセミナーで習得することができます。
また、リーダーシップや営業力については、他社に就職して、その修行期間に習得することができるでしょう。
他社で、従業員として働くことは、経営者になって人を使う上で重要な体験になります。自分が部下として他人に使われ、その痛みや喜びを感じ、使われる人の気持ちがわかるものです。
同族企業であれば、子供を最初から自分の会社に入社させるのではなく、他社で修行させることは後継者育成にとっては大きな効果があることです。
まとめ
今までご説明したように、後継者が一人前の経営者になるためには、様々な能力が必要です。
それらを習得するためには、財務分析のような机上の勉強だけでなく、実際に経験しなければ得られないものもありますので、必然的に時間がかかります。
その前提で、後継者の準備を計画的に行っていただくことをお勧めします。