本書のテーマ
有名なアリとキリギリスのイソップ寓話は、誰もがよく知っています。
夏のあいだ、勤勉なアリは冬の食料を蓄えるためにせっせと働いた。一方の気楽なキリギリスは自由に遊んで過ごした。やがて冬が到来した。アリは生き残り、キリギリスには悲惨な現実が待っていた―。
この寓話の教訓は、人生には、働くべきときと遊ぶべきときがある、というものです。しかし、アリはいつ遊ぶことができるのでしょうか?
それが、この本のテーマです。
事業承継を迎える経営者に参考になる部分
本書の中で、これから事業承継を迎える経営者の方に参考にしていただきたい部分は次のポイントです。
・お金の価値は加齢とともに変化する
・死んでからお金を子供に渡すのでは遅すぎる
・資産のピークは、「金額」ではなく、「時期」で考える
リタイア後にどれだけのお金が必要でしょうか
経営者の方がリタイアされる時には、退職金を受けとることになりますが、税務的に適正と言われている退職金の計算式(※)で、創業社長の退職金を計算すると、ものすごく高額になることが多いものです。
※退職金の計算額
最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率
経営者のみなさまは、同業他社の社長がどれくらいの退職金を受け取ったのかという情報をよくご存知で、自分も同等の金額を貰いたいという方も多いものです。
これは、本当にお金が欲しいというよりも、ある種のプライドからであることが多いと思います。
そもそも、70歳代、80歳代の経営者が、何億円、何十億円のお金を貰って、楽しく使うことができるのでしょうか。
若い頃だったら、いい車に乗って、いいスーツを着て、いい時計をして、美味しいものを食べて・・・・とお金を使って楽しむことがたくさんあったと思いますが、年齢とともに、そういう欲求は減少するのではないでしょうか。
これに対して、リタイアする経営者の後継者(ご子息など)の世代であれば、子供の教育費などにお金がかかる時期です。
何億円と言わずに、数百万円でも嬉しいものだと思います。
ただ、プライドのために、使わない数億円を受け取るよりも、本当に必要な人に渡すことで、経営者ご本人も、より大きな喜びを得られるのではないでしょうか。
ですから、リタイア時期を検討し始めたら、経営者ご自身の役員報酬を引き下げて、代わりに次世代役員の報酬を引き上げることは、それだけで、次世代役員から感謝されますし、また、さきほどの役員退職金の金額が減る計算にもなります。
確かに、現社長が会社を築いた功績は称えられるものだと思いますが、それが多額の退職金である必要はないと思います。
ご興味のある経営者のみなさまには、この本を読まれることをお勧めします。