書籍の概要
この本の著者は、日本人なら誰でも知っているカップヌードルを販売されている日清食品ホールディングス社長の安藤宏基氏が書かれた自伝的経営書です。
朝ドラ「まんぷく」では、先代である創業者、安藤百福氏の人生が描かれていたので、その波乱万丈の人生とチキンラーメンやカップヌードルの誕生物語をご覧になった方も多いことでしょう。
この本は、その時のエピソードも交えながら、その後の日清食品の発展が描かれています。
前半は後継者のカリスマ創業者との向き合い方、後半は新商品、ブランディング戦略とそれを成功させる組織・体制づくりなどがテーマになっていて、会社経営にとって必要な要素が多く詰め込まれた素晴らしいビジネス書です。
ビジネス書と事業承継の解説書の両面がある本
私は事業承継対策のコンサルティングという仕事柄、経営者が書いた本をよく読みますが、その多くは、創業者のサクセスストーリーです。
ゼロから会社を興し、発展させた創業者はカリスマであり、後継者の仕事が創業者のお眼鏡にかなうことは、残念ながら多くないと考えられます。
しかし、後継者が少しでも創業者に近づくためには創業者のノウハウをできるだけ多く吸収することが大切だと私は考えており、色々な本から、後継者に役立つ内容を抽出して、後継者へのアドバイスに役立てています。
私はこの本を、後継者が学ぶべき経営の指南書と考えて購入しました。
先代が作り上げた偉大なカップヌードルという商品・ブランドを引き継いだ2代目が「カップヌードルをぶっつぶせ!」というタイトルで書かれた本は改革のストーリーだと想像したからです。
もちろん、カップヌードルの成功の上にあぐらをかかずに、2代目である宏基氏が取り組まれた経営戦略は非常に勉強になるものでした。
しかし、私としては、事業承継の本として素晴らしさを感じました。
宏基氏のカリスマ創業者との20年に及ぶ確執や苦しみが詳細に表現されている点、そして、それから得た教訓が書かれており、他の本にない素晴らしさを感じました。
後継者への強いメッセージ
さて、本書には、「創業者とうまく付き合うための四つの教訓」が書かれています。
その1
会社の無形固定資産の中で最大価値は「創業者精神」であると思え
その2
二代目の功績は創業者の偉業の中に含まれると思え
その3
二代目は「守成の経営」に徹すべし
その4
創業者の話に異論を挟むな。まず「ごもっとも」と言え
いかがでしょうか。
特に、その4は、なかなかできることではありません。後継者の方の中には反感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、とても重要なメッセージであると考えます。
この項目だけ読まれると、誤解される部分もあるかと思いますので、ぜひ、本をお買い求めになって、宏基氏の解説を読まれることをおススメします。
こんなに深く、重要な話は、後継者セミナーなどで触れることは難しいと思います。
時代が変わっても色褪せない本
この本は、2009年に出版されたものです。
発売から10年以上も経過していますが、全く色褪せていない本です。
発売当初、堺屋太一氏から寄せられた書籍の帯には、『二代目には創業者の偉さが分かる。創業者には二代目の苦労は分からない。二代目こそ、強靭で謙虚で大胆でなければならない。』とあったそうです。
これも、後継者の方には、心に響くメッセージではないでしょうか。
経営を学ぶ時に、P.Fドラッカー氏の本を読んだ後継者の方は多いと思いますが、この本は、さらに経営に実践的に活用できる本として、必ず読んでいただきたい1冊です。