自社株を子供たちに均等に渡しつつ、後継者の支配権を確保する方法 | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2022/6/24

自社株を子供たちに均等に渡しつつ、後継者の支配権を確保する方法

〇自社株は、後継者に全て渡すのがセオリーだが・・・

以前のコラム、自社株を安易に子供たちに渡してはいけませんにおいて、後継者が支配権を確保するために、自社株は子供たちに均等に渡すのではなく、後継者に渡すことが大切だと説明しました。

しかし、社長としては、自分で大きくした会社の株を、どうしても子供たち全員に均等に渡したいと考えるケースが少なくありません。
そこで、今回は、そんな社長のご希望をかなえるために、子供たちに均等に自社株を渡しても、後継者は支配権を確保し、安定した経営を行える方法について、ご説明します。

〇支配権の問題点

【ケーススタディ:子供2人が経営陣である場合】
例えば、社長の長男、次男が既に役員になっていて、次男が後継者の場合について考えてみましょう。
社長が1,000株を所有していた状態から、長男、次男が、各2分の1である、500株ずつを取得したとします。

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その結果、どうなるでしょうか。
後継者である次男の持株シェア、長男の持株シェアは、同一の50%であり、このままでは、株主総会の普通決議すら可決できません。

兄弟仲良く経営ができれば問題がないのですが、社長になれなかった長男が次男のことを、心の底では妬んでいる場合もあり、そのような状態において、兄弟の経営方針が異なると、株主総会で重要事項を決定できなくなってしまいます。

親である社長からみると、兄弟仲良く経営して欲しいという願望が強く、その実現可能性を考えずに、安易に「兄弟仲良く経営してくれるはずだ」と決めつけてしてしまうことがありますが、世の中の例を見ると、兄弟経営が簡単にうまくいかないケースも多いものです。
有名な〇〇家具や、〇〇帆布など、兄弟で訴訟をしているケースは、みなさまもご存知かと思います。

〇解決方法:中小企業投資育成の出資を受ける

それでは、社長の想いをかなえるために、中小企業投資育成の出資を受けることで、この問題を解決する方法をご説明します。

まず、中小企業投資育成の説明です。

中小企業投資育成とは、国が中小企業の成長発展支援のため1963年に制定した特別法(中小企業投資育成株式会社法)に基づいて設立された会社です。
上場の義務付け等がなく、経営干渉しない公的な超長期安定株主であることが特徴です。

わかりやすくまとめると、中小企業の安定株主とイメージして頂ければと思います。

さて、先ほどの事例で、中小企業投資育成が出資した場合に、子供たちのシェアがどうなるのかをみてみましょう。

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社長が1,000株(持株シェア100%)所有している状態で、中小企業投資育成が500株出資します。
そうすると、社長のシェアが66.7%、中小企業投資育成のシェアが33.3%となります。
この状態でも、社長の持株シェアは3分の2ですので、単独で株主総会の特別決議を可決できるため、支配権の問題はありません。

そして、次に、その状態で、社長が所有株式の各2分の1を長男・次男に渡します。
ここで、大切な大前提は、中小企業投資育成は、安定株主として、社長(ここでは後継者)の味方であるということです。
事例のケースでは、後継者(次男)が社長からバトンタッチを受けた後、中小企業投資育成は、次男の味方になります。
つまり、株主総会においては、次男単独の持株シェアは、33.3%と過半数に満たないものの、中小企業投資育成との合計の持株シェア(上記表の経営者シェア)は、66.7%であり、特別決議を可決できる状態にありますので、次男は支配権を確保し、スムーズに会社経営をすることができます。

以上のように、中小企業投資育成の出資により、子供たちに自社株を均等に渡すという社長の想いをかなえると同時に、後継者の支配権を確保することができました。
中小企業投資育成の業務などを、よくご存知ない方は、一度、ご相談をされたり、セミナーに参加されることをお勧めします。

■社長がスムーズに経営できることの重要性

「社長がスムーズに経営をすることができる」というのは、とても重要なことです。
なぜなら、社長は、会社の重要事項をスピーディに決断しなくてはならないからです。

会社を経営していると、会社の内部、外部ともに環境が様々に変化します。
最近では、コロナウイルスや戦争など、予想もしなかったことが起き、それが経営に与える影響がとても大きく、社長はその時々において、重要な意思決定をスピーディーに行わなくてはなりません。
重要な決断を行う場合、兄弟で意見を調整するという必要がなく、社長1人で決定できる状態にしておくことは、とても重要なことです。

〇とは言え・・・やはり、会社に関係ない子供には渡さない方が良い

さて、これまで、「自社株を子供たちに均等に渡しつつ、後継者の支配権を確保する方法」についてご説明しました。

自社株を渡す子供たちが経営陣であれば、上記方法により実行されても良いと思いますが、経営に関係ない子供が株主になることは、株主総会でのやり取りが増え、経営に対する不満を述べられる可能性があったり、自社株の買取請求など、問題が増えることになりますので、極力回避されることをお勧めします。

中小企業投資育成が、自社株を取得することについて、もっと詳しく知りたい方には、「事業承継がゼロからわかる本」がお勧めです。

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