経営体制の構築② ~後継社長を中心とした新体制の確立~ | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2020/9/29

経営体制の構築② ~後継社長を中心とした新体制の確立~

経営体制の構築② ~後継社長を中心とした新体制の確立~

現社長が後継者に社長のイスを渡した時、後継者が社長のイスに座っただけでは、取締役会という経営体制は機能せず、会社経営はうまくいくものではありません。

なぜなら、現社長は、現在の経営体制おける役割がとても大きいものですが、後継社長がすぐに、そのすべての役割を担うことはできないからです。
例えば、現社長がワンマン経営の創業者だったとすれば、社長は一人で何でも決定して、役員はそれに従って業務をこなしていくだけでよかったかも知れません。

しかし、ここで重要なことは、後継社長は社長経験のない「初心者」であるということです。
経営初心者の社長は、会社全般の業務について1人で判断することはできず、現社長のように采配をふるうことはできません。
後継社長は現社長の抜けた穴を1人で埋めることは難しいということです。

つまり、後継社長の就任当初は先代を中心とした経営体制であり、後継社長を中心とした経営体制ではないため、バトンタッチに際しては、経営体制を見直す必要があるということです。

現社長を中心とした経営体制から後継社長を中心とした経営体制への変化

それでは、経営初心者の社長が、社長としての役割を果たすためには、どうしたら良いのかというと、それはベテラン役員からサポートを受けることや、役員との役割分担を考えるということです。

簡単に言えば、後継社長が一人で穴を埋められないので、他の役員に助けてもらうということです。
従って、新しい経営体制では、社長と役員の役割分担は大きく変化し、役員が担う部分が増え、先代が抜けた穴を後継社長と役員で埋めていくということです。

そして、このような変化によって、役員の心情にも大きな影響があります。
経営体制の変化の過程で、役員としては現経営者の時と同じように、後継社長と良好な関係を築くことができるかどうか不安に感じることもあるでしょう。
例えば、先代のもとで経営に携わってきた年配の役員の場合には、事業承継がきっかけとなり、自分自身も退職を考えることがあります。
社長の息子が後継者として社長に就任することは同族会社では当たり前のような状況ですが、役員のおかれる状況は大きく変化することであり、決して簡単なことではないのです。

後継者が自分のための経営体制を考えること

後継社長は、ベテラン役員のサポートのおかげで経営に慣れ、会社全般を見渡すことができるようになり、つまり初心者の状態ではなくなった時に、ベテラン役員のことをどう感じるのかということを考えてみます。

後継社長としては、自分が経営手腕を発揮するために役員がサポートをしてくれたことに対し、感謝の気持ちが強いことでしょう。
しかし、年月を経ると後継社長からみて、それらの役員の考え方が古く、新規事業や新しい戦略の妨げになることもあるのです。
お世話になった「先代からの番頭さん」に感謝の気持ちはあっても、会社経営に自分の色を出したいと考える頃には、ベテランの役員と衝突することもあるのです。
つまり役員にも、経営者と同様に承継の適齢期があるということです。

役員に任期はあるものの、一般に、未上場企業の役員には実質的な定年はないことが多いでしょう。
従って、後継社長のスムーズな経営体制の確立を考えると、現社長は、事業承継の準備段階で、役員に対して一定期間、後継者を支えてもらいたいと依頼すると同時に、役員に対してリタイアについての考えを聞いておくというのもひとつの方法です。

次世代役員の選定

ベテラン役員は、後継社長と一緒に、いつまでも経営を続けるわけではありません。
従って、後継社長と経営を共にする次世代役員を選定することが必要です。

これについては、現社長がまず、ご自身の目で過去の実績や人間性などを判断し、役員にふさわしい人を選定すると良いでしょう。
ただし、選定した人物は、今後、後継社長の右腕になる存在でもあり、後継者の意見も十分に取り入れることが必要で、現社長と、後継社長で話し合うことが重要です。

そして、次世代役員の候補者を、いきなり役員に抜擢するのではなく、執行役員等に就任させ、経営陣としての力量を確認する方法があります。
未上場企業の場合、簡単に降格させることはできないため、執行役員としての活躍ぶりを判断して慎重に選定すると、何かあった場合も揉め事が少なくてすみます。
また、この方法であれば、新任役員候補のプレッシャーも回避できることになります。

まとめ

会社は現社長ひとりで経営されてきたのではなく、役員とのチームワークで成り立ってきたものです。
ですから、後継社長がそのチームのリーダーになって、すぐに力を発揮することは難しく、チーム(経営体制)を変化させなくてはならないということです。
事業承継対策を検討する上で、後継社長が強いチームを作れるように、現社長が準備をすることが重要です。

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